王国ファンタジア【宝玉の民】
ドルメックは一度、ゆっくりと深呼吸した。
昂った気持ちを落ち着けて、話す。
「……俺がここまで侵入してしまえば、仲間を救い逃げ出すなんて雑作も無い。
敢えてお前等のやり口に乗ってやったのは、ここ以外の王族の元に渡った仲間の情報が欲しいからだ。
ドラゴンの討伐に成功したら、残りの[民の雫]と情報を寄越せ。
なるべく無駄な争いは避けたい。
無償で渡すように口添えもしておいた方がいいだろう」
ドルメックの赤く煌めく右目が真っ直ぐ国王を見る。
手に持っていたナイフをしまうと、皮肉な笑みを浮かべた。
「…俺に何か言うことがないか?」
国王は掠れた声で言った。
「そなたの仲間を思いやる気持ちは当然のものだ。
非礼を詫びよう。
勿論ドラゴン討伐後は、そなたの希望に添うように取り計らう。
…改めて、ドラゴン討伐を引き受けて貰えるであろうか?」
「…承りましょう」
こうして、ドルメックは仲間の核石を集める為に、ドラゴン討伐の任を受け入れたのだった。