薔薇の王女
「その後はお前も知っているだろ…?貫通罪で首を跳ねられた事を」
「アイク団長…」
バンッ!力まかせに団長が窓を叩く。その手にはうっすら血が滲んでいた。
「俺は愛する人が目の前で首を跳ねられるのを黙って見るしか出来なかった、いっそのこと全員を切り捨てても助けたいと思ったさ…だがアン様は頑なにその考えを断った。」
ぽたり…ぽたり…
団長の目に涙が再び浮かぶ
「全ては娘であるクレア様の為だ、他の男と逃走などしてしまえばクレア様は間違いなく王女として父親である王にも認めてもらえなかっただろう。私はあの時程自分の無力さを呪った事はない。」
だから、あれほどクレア様を大事になさってたのか…愛する人の残した大切な宝
己の命をかけても守ろうとするもの
俺は団長の前まで歩いていき、ひざまずき
「必ず幸せにします。王妃様が命をかけて守ろうとしたあの方を」
団長も俺の手を握りしめ
「頼んだぞ…セシル。」
急に顔色が変わる団長、その表情はいつになく厳しく
立て掛けてある剣を取り、明かりを消す。
「そして、クレア様の姉であるメアリ様を守るのも私の役目だ。セシル最後の仕事だ!」
俺も頷き、剣を持ち支度する。扉を明けると団長は走りだし俺も後についていった。