夢見な百合の花
「ごめんねサヨちゃん。これは君のお兄さんのせいなんだから、妹のサヨちゃんは許してくれるよね?」

やはり、ケイタの口調は優しい…だが、サヨの襟首を強く引っ張り、至近距離で顔を近づけられながらの優しい表情など、サヨにとっては逆に怖い印象を与えるだけであるだろう。

当然、サヨの表情には、明かな恐怖の色がありありと浮かんでいた。

「…お兄ちゃんが、何したんですか?」

恐怖を感じているからか、はたまたカズヤの事に関してだったからか、サヨはケイタの言葉に反応し、返事を返していた。

「君のお兄さんが、俺達をはめたんだよ。まぁ元々は、俺達が悪いんだけどね…でも、そんな事は本当はどうでもいいんだよ」

ケイタはそう言うと、ポケットに忍ばしていたナイフを取り出した。サヨはナイフを目の前にし、声にもならない悲鳴を上げる。

「俺達は、ただやりたい事をやる。女は抱きたい時に抱く、薬はキメたい時にキメる…報復もまた、それと同じ事なんだよ」

ケイタはそう言うと、サヨの顔の目の前で、手に持っていたナイフをチラつかせた。そして、そのナイフを使い、サヨの着ていた上着を一か所、ナイフで切り裂いた…。

その様子を見ていた周りの男は、そんなケイタの行動に黄色い声援を送りだす…。サヨはというと、完全に腰を抜かしたみたいで、手足をバタつかせながらも、その場から動けないようである。

「ねぇサヨちゃん…君は、どうしてあの男の子を見捨てたんだい?」

「ひいっ…あ…ぁ……?」
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