夢見な百合の花

ケイタはサヨに話しかけながら、着々と準備を進める…。

「この薬を使えば、少しは楽になるはずだよ…俺も悪魔じゃない。友達の妹の苦しい顔なんて本当は見たくないんだよ」

ケイタは準備が終わると、サヨに笑顔を見せる…冷静な判断が出来る人間が居れば、ケイタの顔は、悪魔の笑顔をしていたと判断したであろう笑顔を。

ケイタは、無抵抗のサヨの細い腕をつかむと、紐を使い、血管を探す…そして、迷う事なく、経静脈に針を打ち込んだ。

「ふふっ…あはは！」

作業が終わった頃には、我慢が出来なかったのか、ケイタは大声で笑い出していた。

そして、サヨの体にも異変が起きていた。しきりに、自分の体を爪で引っ掻いている…そして、サヨの額には、冬の季節なのに、薄らと汗がにじんでいた。

「どうだいサヨちゃん！なかなか気分が良いだろう？ちょっと待ってなよ。俺も今から君と同じ気分を味わうからさ！」

ケイタは新しい注射針を取り出し、手馴れた手つきで、自分の身体に麻薬を投与していた。

ケイタの場合は、サヨの反応とは違い、気分を大きく高ぶらせていた様で、眼付が大きく変わっていた。視線は一点に定まっていなく、しきりに周りの様子に目を配っている様な素振りをしていた。

「おまたへぇ…ところでサヨちゃん、どうして汗をかいているんだい？もしかして身体が熱いのかい？だったら、もう少し風通りを良くしてあげるよ」