夢見な百合の花
ケイタは持っていたナイフで、サヨの服を更に切り裂いた…時折奇声を発しながら。

そしてサヨはナイフで服を刻まれる度に、悲鳴を上げていた。そんなサヨの純粋な反応に、ケイタも大喜びで、服を切り刻む。

そして、ケイタが満足した頃には、サヨの表情に異変が起きていた…。喜怒哀楽のどれにもあてはまらない表情。

まさしくサヨの顔は、感情が無い表情…無表情だった。

「ふぅ……飽きたな。そろそろ死ぬ?」

ケイタもまた、今日初めて見せる無表情で、残酷な言葉をサヨに浴びせかける。

「……死?…あれ?……ヒサ…死………死んじゃった」





サヨは、呟くように単語の羅列を並べ出した。





「ヒサが……死んじゃった。サヨも……死んじゃった?」











「こんな所かな…多分、その後ぐらいに君とケイタが駆けつけたんだよ」

ケイタはスラスラと、悪魔の様な話を俺に話してくれた。

この場に居合わせた、3人の大人は、かなり引き攣った表情をしている。

そして俺は、自分の体が熱くなるのをしきりに我慢しながら、ケイタの話に耳を傾けていた。

自分でもよく我慢出来たと思う…許されるのなら、今すぐにでもケイタを殴り殺したい気分だ。

「話は…解った。俺はこれで失礼する…」

俺はそう言うと腰を上げ、出口に向かって歩き出した。安藤さんが、慌てて俺の後についてくる。

「…それとケイタ。少年院を出ても、決して俺の前に現れないでくれ…今度は多分…俺は、お前を殺してしまうかもしれないから」
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