夢見な百合の花
安藤さんが俺の後ろかから、少し慌てた様子で着いて来た。

「……はい」

俺は安藤さんの声を聞き、足を止めた。

「ふぅ…ヒサジ君、今日のところはもう帰るのかい?」

「はい…もう用事は済みましたのでね」

それに、気持の整理もつけたい。今のままでは、気持ちが先走りし過ぎてて、冷静な考えなど出来そうにないしな。

安藤さんは、何か俺に言おうとしているようだったが、結局は何も言わず、俺の前を歩いて行った。俺はその安藤さんの後ろ姿を何気なく見ながら、着いて行き…そしてこの少年院を後にした…。

俺は、少年院を出た後、少し街をぶらつく事にした。何か見たい物があった訳ではなかったが、このまま電車で自分の町に帰る気にもなれなかったからだ。

町は、土曜日という事もあり、俺と同じくらいの年代の人がちらほらと見受けられた。女を連れ、デートをしている人も居れば、男同士で楽しそうに会話をしていたりと、今を楽しく生きている様に俺には感じた。

特にデートをしているカップルは、実に幸せそうだ。しっかりと繋がれた手…どうしても昔の自分と照らし合わせてしまう。

あの日に戻りたい…。

戻るのが無理なら、せめて…。

次第に俺の中で渦巻いていた、怒りの感情が小さくなってきていた。

もう一度考えてみよう…。

手に入れられる情報は、これ以上はもうないであろうから…。

この情報の中で、答えを探すのだ。





そして…。





俺は、一つの答えを出した。




とても危険で…。





とてもバカバカしい答えを…。
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