夢見な百合の花
冷徹な目をした男は、俺を目にすると、俺に近づいてきた。

そしてもう一人のサングラスをかけた男は、サヨの腕をしっかりと掴み、拘束をいていた。

サヨは、俺の姿を見ると、何やらビックリした様子で、口を半開きにし、大層驚いた様子だ。

「よう…覚悟は出来ているか?」

冷徹な眼をした男が、その眼光を更に鋭くさせ、俺に問いかけてきた。久々に味わう緊張感だ…同等の力を持った男との対峙。

手加減なんて出来ない相手。俺の目の前に居る男は、それだけの実力を持っている男だった…。

「あぁ…」

俺は、頷く程度にそう答えると、構えを取る…。そして、俺の目の前に居る男も静かに構えを取りだした。

斜に構えるスタイルで、左手を下げ、右手を顔の前に構える。ボクシングのデトロイトスタイルに似て非なるこの構えは、この男の得意な構えだ…。

上段から下段まで、あらゆる角度からの攻撃にも対応出来る、万能な構えでもある。

そして男は、俺よりも先に行動を開始した。

素早く踏み込み、ミドルレンジまで近づいて来る。俺はその踏み込みを先読みし、俺の距離である至近距離に踏み込もうとした…だが。

「っ!?」

男もまた、俺の動きを読んでいた。俺が踏み込むのを読んでいた男は、俺の踏み込みに合わせて膝蹴りを入れてきたのだ。何とか腕で防御はしたものの、俺は体制を崩す…そして俺が体制を立て直す前に、男の回し蹴りが、俺の顔面にクリーンヒットしていた。

鈍い音が俺の耳に響く…。軽い眩暈が起こる中、攻撃はなおも続いていた。

良い一撃が入っても、油断する男ではないからな…。

間髪入れず、俺の首元狙いの、前蹴りが俺に襲ってきた。何とかガードは間に合いそうだが…。

「がっ!!」

あえてガードせず、まともに攻撃をもらった。
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