夢見な百合の花
「そうか…こんな事頼めるのハヤトぐらいしかいないから、正直助かるよ」

これが俺のシナリオだ。

ハヤトと俺のケンカをサヨに見てもらう事。当然、俺がハヤトに勝ってしまっては意味がないから、俺が一歩的に殴られる事になる。

俺もある程度の怪我は覚悟しないといけない、破れかぶれの作戦だ…。

「ふっ…了解だ。日程はミツハルと計画を練って、そっちに行く事にするよ」

これで、役者は揃った。後は…。

「最後に一つだけ、ハヤトにお願いがある…」

「ん?何だ?」

ハヤトは俺の親友で、ハヤト自身も俺の事を友達と思ってくれているだろう…。

だからこそ、頼まなくちゃいけない事がある。

「…俺がどんな怪我を負おうが、絶対に手を抜かないでくれ。いくら血を流そうが、骨を折ろうがな」

ハヤトは意外と優しい人間だ。情けをかけないように見えて、必要以上の攻撃は絶対にしない人間だ…俺に対しても手加減する事は大いに考えられる。

「……あぁ。解ったよ」









そうだハヤト…。

その眼だ。その相手を委縮させる、殺気を込めた眼で俺を見てくれ。

そして……俺を殺せ。

ハヤトは静かに構えると、俺に対しての攻撃を再開した。呼吸がうまく出来ていない俺に対し、脇腹を中心に攻撃してきた。

ハヤトは知っているのだ。俺が、脇腹を痛めていた事に…。
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