夢見な百合の花
そんな俺に、ハヤトはゆっくりと近づいてくる…。ハヤトは、鬼気迫る表情をしており、まさに鬼の様な形相をしている。

そして俺も気づいた…ハヤトの拳もすでに皮が裂け、かなりの血が出ている事に。

ほとんどサンドバッグになっている俺だが、ハヤトも無傷ではないのだ。

頭の骨は以外に固い。額なんかは、相手の拳の骨を逆に砕けるぐらいの固さがある…ハヤトもかなり我慢して、俺の作戦に付き合ってくれているのだ。

俺が、顔の急所を亀の様にガードをしていたおかげで、ハヤトは固い部分をひたすら殴っていた。

ある程度の怪我を覚悟の上で…。

済まない……ハヤト。

俺は静かに立ち上がる。そして…。

「あぁぁっ!」

攻撃に転じた…ノーガードで。

俺が急に攻撃に転じた事に、驚いていたハヤトは、俺の右フックをもろに受けていた…。俺はこのタイミングを逃すことなく、ラッシュを仕掛ける。

守りに入るな…。ハヤトは百戦錬磨のケンカのプロだ。この程度の攻撃には慣れている…。

ハヤトは冷静に俺の攻撃をさばくと、カウンター一閃で俺の顎を捕らえた。

急に俺の視界がぶれる…。意識が遠くなる。

腰が抜けた俺は、勢いをそのまま地面に座り込む様に崩れ落ち、額を強打した。女の子座りをした様な体制で腰が落ちる…。

一瞬完全に意識が飛んだ…。頭をコンクリに打って、初めて自分が座り込んでいる事に気づいたぐらいだからな…。

足に力が入らない…ついでに、頭が異常に熱く感じる。

この感覚…久しぶりに味わう。

これは…。

「…ヒサジ…もう限界だ」

ハヤトが俺にしか聞こえないぐらい小さい声で俺に話しかけてきた。
< 113 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop