夢見な百合の花
そうか…思い出した。これは、あの時と同じ感覚。

下を向くとはっきりと自分の状況が理解できる…この滴る量の出血。

これは…俺が一度『死んだ』時の感覚だ…。

意識がもうろうとする中、その時は突然起きた。

「…あぁ……うぁ…」

呻く用な声…耳鳴りがしている俺の耳でも、しっかりと聞こえた。

「さ…ヨ?」

正直俺もまともに声が出せる状況ではない…。だが、ここで声を出さなくて何時出す!

俺は、入らない足に力を込め、立ち上がる。真っ直ぐ立てない俺に、ハヤトが手を貸そうとするが…。

「大丈夫だハヤト…ここからは俺の仕事だ」

聞き取って貰えたか分からないが、ハヤトは俺の言葉を聞くと、俺から身を引いた…。

待っててくれサヨ…今そこに行く。

サングラスをかけた男…まぁ、ミツハルさんなんだが、ミツハルさんはサヨの腕を放すと、サヨから身を引いた。

サヨは未だに俺の顔を見て、何かを喋っている。

聞き取れる声量ではないサヨの言葉…。

もっと近づかないと…。

俺は俺の脚でサヨに近づく…だが。

「うっ?」

足がつっかえ、その場で倒れてしまった…。こんなにダメージを受けたのは初めてだ。

あのクリスマスイブの日でも、ここまでダメージを受けてない…あの時は少なくても歩く事ぐらいは出来たんだがな。
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