夢見な百合の花
俺が思わずうずくまり、そんな事を考えていると、誰かの腕が俺の体を抱きしめている事に気づいた。

華奢な腕…傷一つない綺麗な腕が俺を包み込む。

俺は顔を上げ、その人物を見つめる…。

「サヨ…?」

俺を抱きしめる人物…それはまぎれもなくサヨだ。さっきまで少し離れた位置に居たサヨだったが、今はこうして俺の目の前に居る。

…記憶が戻ったのか?

だが少し様子がおかしい…サヨは、何かに戸惑っている。

一体何に戸惑っている?

サヨは、俺の体を優しく抱きしめ、俺の顔を凝視してきた…。

顔?…違う。顔じゃない…サヨが見ているのは。

「俺の血か…この血を見て戸惑っているのか」

俺は急ぎ、頭から流れる血を圧迫止血し、血を止めようとしたのだが…。



全然止まらねぇ…。



俺が一人、悪戦苦闘すると、サヨに動きがあった。座りながら俺を抱きしめていたサヨが、膝立ちになり、自分の着ていた病院服の袖で、俺の頭を押さえ、止血しようとしたのだ。

そしてそのまま、俺の頭を抱きかかえる様に、抱きしめる。
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