夢見な百合の花
そして俺の中でも何かが弾けそうになっているんだ。心なしか、俺の視界が何かに遮られている様な気がする。

身体と同時に声も震えてきた…。

「俺は、サヨが大好きだ。だから絶対に俺の手で守りたかった……助けたかったんだ」

やっぱり声が震える…そして気づいた。

俺…もしかして泣いているのか?

こんな時ぐらい、格好つけさせてくれよ…男の泣き顔なんて、格好悪いだけだ。

俺は懸命に我慢をしてはいるのだが、涙は止まりそうになかった。ついに、とめどなく溢れ出てくる俺の涙は重力に負け、顔を伝って地面に落ちてしまった…。

その時だ…。

サヨが声を出して泣きだしたのは…。

俺の涙が流れるのが、合図だったのかは解らないが、サヨが声を上げ泣き出した。

そしてサヨが、俺の胸に飛び込んでくる。力一杯、俺の胸元の服を掴み、顔をうずめる様にして…。

そしてサヨは、俺が一番聞きたかった言葉を言ってくれたんだ。

「……ヒサぁ」

ダメだ…やっぱり我慢なんて出来そうにない。

俺はやっぱり弱いままなのかなサヨ…涙が止まらないんだ。

すげぇ、自分が不甲斐無く感じる。

でも別にいいかもしれねぇな…この言葉さえ聞けるなら、俺は格好悪くても良い…。

「…サヨっ」

「ヒサぁっ!!」

待ち焦がれていた。サヨが俺の名前を呼んぶ瞬間を…。
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