夢見な百合の花
一気に体の硬直が解け、目の前の愛おしい人を抱きしめる。

本当なら、サヨを抱きしめる前に確かめないといけない事はたくさんある。本当に俺の知っているサヨが目の前に居るのかとか、気分は悪くないかとか…。

でも今はただサヨを抱きしめていたかった。

絶対にサヨを助けると心に誓ったものの、保障なんて何もなく、暗闇の中を走ったすえにたどり着いたゴール…。

この瞬間が俺の身に起きたという奇跡を、俺の体で感じてみたかった。

そしてサヨの存在をこの身に感じたのちに、俺は確信にせまる…。

眼の前に居るサヨは俺の知っているサヨかどうかを…。

「サヨ……おかえり」

俺は耳元でささやく様に、言葉を発した。

そして……

「………ただいま…ヒサ…」

サヨは、しっかりと俺に言葉を返した…。
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