夢見な百合の花
カズヤは、俺がサヨから逃げていた時も、変わらずサヨの回復を願いこの約二年もの間、ほぼ毎日サヨの病院に顔を出していた…。

サヨはもちろん、俺の事も弟の様に考えてくれているカズヤは、俺達の兄として自分を厳しく律して生活していた節がある。

気が遠くなる様な歳月の間、誰にも弱音を吐く事なく影でサヨを支えていたカズヤにとっても、この瞬間は何よりの幸せに違いなかった…。

実に微笑ましい…見ているコッチも幸せな気分になってくる。

俺がそんな二人の光景を眺めていると、俺の隣にハヤトがやってきた。

「無事かヒサジ?」

「大丈夫だ…まだ少しフラ付くが、頭の血は大方止まったし、意識はしっかりしている。面倒をかけたなハヤト、助かったよ…」

ハヤトは俺の体の心配をし、俺は改めてハヤトに礼を言った…。

「礼は言わなくて良いよ。それよりもヒサジ…俺を殴れ」

ハヤトは俺にそう言うと、ノーガードで俺に顔を差し出す…。

「ハヤトならそう言うとは思っていたけどよ…俺がそんな事出来る訳ないだろうが。しかもこれは俺が望んだ結果なんだから、ハヤトを殴る理由がない」

「…ダメだ、殴れ」

ハヤトはそう言い、俺の言う事を聞いてはくれなかった。

「…断る」

「ダメだ」

再度俺は断ったのだが、ハヤトは断固として聞き入れてくれない…。
< 120 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop