夢見な百合の花
「お兄ちゃんが居て、ヒサが居る。ずっと会いたかった二人が居るこの夢は、サヨにとって本当の夢……本当に…会いたかった」

サヨはそう言うと、静かに涙を浮かべ出した。

そんなサヨの様子を見て、衝動的に俺はサヨの体を抱きしめていた。こんなサヨは見たくない…もっと笑ってほしい。

サヨは俺の胸に抱かれながら、こう言葉を続けた…。

「あの時ねヒサ…サヨのせいでヒサが怪我をして…自分がすごく嫌いになったの。どうしてあの時ヒサの元を離れたんだろうって」

「もう良いよサヨ…」

サヨがあの時、どう思っていたかなんてどうでも良いんだ。

「自分の弱さに嫌気がさした…どうして……ごめんねヒサ。……ごめんなさい」

俺が自分の弱さに嫌気がさしたのと同じく、サヨもあの時の自分を後悔しているのか…。

「謝らなくて良いよサヨ…俺もサヨを守り切る事が出来なかった事を後悔していたけど、今はサヨに直接謝ろうとは思っていないから」

「んっ?」

サヨは、俺の胸元で軽く呻くように言葉を返してきた。

俺はこの時サヨの言葉を聞いて、改めて気づいた事があるんだ。それは…

「あの時の俺とサヨにはあれが限界だったんだよ。自分が出来る精一杯の行動だった…まだまだガキで、自分一人では何も出来なかった子供でしかなかった。だから、あんな結果になってしまったんだ」

弱さを認める…考えたところで過去は何も変わらないし、俺達はこれからも生きて行かなくちゃいけない。

だったらいっその事、自分の弱さを認めよう。

「仕方なかったんだ…俺もサヨも弱かったから、あんな事件に発展した。けどこれからは違う…これからは、強く生きてみせる」
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