夢見な百合の花
こんな有り触れた会話が何よりも楽しい。ヒサジは、そんな事を考えながらサヨに話しかけていた…。

「うん。ヒサが教えて…」

「任せとけ……少しなら俺でも教えれるから」

「少しだけなの?」

「…面目ない」

ヒサジにとって会話の内容は何でも良かった。

恐らくサヨも同じ事を考えているだろう。

「ヒサジが…女と手を繋いで歩いてるぞヒデ!事件だ!」

「…朝からウルサイよイサミ」

平穏な時をバッサリと切り裂くイサミの声。そんなイサミを冷静に注意するヒデ…。

ヒサジの顔には呆れた様な雰囲気があり、軽いため息をついている。サヨはと言うと、急なイサミの叫び声にビックリしたのか、ヒサジの腕に抱きつく様にしがみ付いていた。

「うれせぇよイサミ。サヨが驚いているだろうが…」

「悪りぃ…つうかこの子がサヨちゃんか。ヒデには聞いていたんだけどよ…病気なんだって?もう出歩いて大丈夫なのか?」

イサミはサヨに目を向けると、ある程度の距離を保ちながら、サヨに問いかけていた。

どうやらイサミはサヨの病気についてヒデから聞いていたみたいで、サヨに気を使いながら、話かけている。

「はい…大丈夫だと思います」

「敬語はよせよ。同い年なんだからよ!俺はイサミってんだ、コイツがヒデ」

イサミは後ろ指でヒデを指差しながら、自己紹介をした。

「初めましてサヨちゃん。ヒデです…よろしく」

ヒデはと言うと、イサミの指を掴んで捻りをくわえていた。当然イサミの顔には苦痛の表情が浮かんでおり、叫び声を上げていた。

「何しやがるヒデ!痛てぇじゃねぇか!」
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