夢見な百合の花
ヒサジとサヨは、去って行った二人を見つめた後、ゆっくりと学校に向かって歩き出した。

その道には、昔と変わらず綺麗に手入れをされた花が咲いており、普段なら眼に入らない花に二人は目を奪われていた。

「この『花道』も懐かしいね…」

「そうだな…言われてみれば懐かしい感じもするな」

わざわざ足を止めて眺めるほどの事ではないが、こうして歩きながら花を見ていると、凄く懐かしく感じるとヒサジは思っていた。

「この花…サヨ好きだな」

「ん？どの花だ？」

サヨは突然足を止めると、とある花を指差し、そう答えた。ヒサジはサヨの目線の先にある花を見つけると、小さく笑った。

「俺も好きだな…俺の道しるべにもなった花だし」

「道しるべ？この『百合』の花が？」

サヨが指差していたのは、凛と咲いていた百合の花だった。

ヒサジが勝手に決めたサヨのイメージがこの百合の花だ。サヨの満面の笑顔ではなく、清楚なほほ笑む様な笑顔…それが見たくてヒサジは頑張ってきた。

「そうだ…百合の花は俺にとって、大きな役割を、持っていたんだよ」

「…？」

当然サヨにはヒサジが何を言っているか理解はできなかった。

だがヒサジはその理由をサヨに語る事なく、サヨに手を差し伸べた。

「学校に遅れる、そろそろ行こうぜ」

サヨはそんなヒサジを不思議に思いながらも、差し出された手を掴み、ヒサジと共に学校に向ってゆっくりと歩き出した。
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