夢見な百合の花
俺がガキだった頃…暴力でしかサヨを守ることが出来なくて…。

ケンカの強さだけがサヨを守るゆいつの方法だった。

それしか俺には出来なくて…守るとはそう言う事だと俺自身が思っていたんだ。

でも、結局はそれも自分の過信でサヨを守り切る事が出来なかった。

そんな自分の過信が原因でサヨがあんな目にあったと考えると、後悔や自責の念で追い込まれた事は何度もあった。

現実から逃げそうになりながら、それでもサヨの事を忘れることなんて出来なくて、俺は自分の信じた道を進んだ。

俺のした事が本当に正しかった事かなんて俺には分からない。一つ間違えたら取り返しのつかない事が起きていたかもしれないから…。

でも今は、これだけははっきりと言える。

俺は決して出来た人間ではないけど…。

けど、目の前の日常を守ることぐらいは今の俺でも出来るんじゃないかって。

道しるべは出来たんだ…。

俺にはこの手で守りたい人が居るから…小さくも綺麗で儚いこの百合の花が咲く場所を。

俺は見つけたから…。

この手を放さなければきっと…。



サヨと二人で手を繋ぎながら登校していると、道行く学生達が、俺達の姿を遠巻きに見ていた。

普段見掛けない俺とサヨの手を繋いでいる姿に、興味を惹かれたのだろう…。

「みんなこっち見てる…どうしてだろうね?」

サヨは俺に目線を向けると、少し困惑した様な様子で俺に聞いてきた。
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