夢見な百合の花
「どうだかな…俺にも良くは解らないけど、別に気にする必要もないさ。見られて困る事なんてないしな」

サヨは俺の言葉を聞き、周りに視線を送りながらも、まだ頭の中で思案している様だ。

サヨにはこう言ったが、俺には理由なんてものは正直解りきっていた。女子の視線には明らかな羨望の思いが見てとれるし、男子の視線にはこれまたハッキリとした俺に対する敵意みたいな感じを受ける。

女はサヨのルックスにビックリしているのだろうし、男はそんなサヨと手を繋いでいる俺に何とも言い難い憤りを感じているのだろう。

まぁ、若干名なんだけどな…。

そうこうしているうちに学校に到着した俺とサヨは、校門を潜った。

「そう言えば俺が復学した時、自己紹介やらされたっけか」

「えっ…そうなの?」

俺は夏休み明けの時の事を思い出しながら、サヨに話しかけた。

「おう。サヨも一応話す言葉考えておいた方がいいぞ?」

「うん…頑張る」

「まぁ、自己紹介を頑張るってのもおかしな話だけどな…」

「そうかな?……じゃあ頑張らない」

「…頑張らないってのもまた変な気もするな」

マジとも冗談とも取れるサヨの話し方。俺は律義に言葉を返しながらも、内心サヨの反応を楽しみながら、俺達は校舎に入って行った。

俺達の新しい日常を、噛みしめながら…。




『夢見の百合の花』 fin

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