夢見な百合の花
空耳かな…今なんて？

「だから、ヒサジは、九月から中学校に行くんだよ…」

院長先生は、さっきと同じセリフを俺に言ってきた。

「ちょっと待ってくれ院長先生！今さら、学校なんて行ける訳ないだろ？一体、何日間無断欠席したと思ってるんだよ？」

休んだのだって一カ月や二か月じゃないんだぞ？丸々一年半も学校に行ってないのに、今さら学校に行くって言ったって、学校側が許すわけないだろ？

「それが大丈夫みたいなんだよヒサジ。今日のうちに学校に行って、確認してきた…病欠扱いにしてもらえるってさ。この資料のおかげみたいだよ？」

院長先生はそう言うと、封筒の中身を出し、俺に見せてくれた。

封筒の中身は、たくさんの資料が入っていた…。俺はそれを一枚一枚確認してみる。

「……なんだこれ…。ウソばっかじゃねぇか…」

書類の中身は要約するとこうだ。

一年半前に暴漢にあった俺の傷が思いのほかひどく、リハビリに一年半の歳月がかかったという内容である。

しかも、ちゃんとした手続きを踏んで、作成された書類であるようで、法的にも十分に適用される書類らしい。そして俺は、書類の中に手書きで書かれた手紙を発見した…。

『ミツハルに感謝しろよヒサジ。この書類はあいつが頑張ってくれたおかげだからな。後は、お前が話を合わせれば、何の問題もなく復学出来るぜ…頑張って来いヒサジ！』

「ミツハルさんが…そうか」

俺が町を離れると言った日から一週間でこれだけの書類を作ってくれたのか…。ただでさえ仕事で忙しい筈なのに…あの人には頭が上がんねぇな…。

「良い人達と知り合ったみたいだねヒサジ…」

院長先生は俺の笑っている表情を見ながら、そう言ってきた。

「うん。俺は、良い友達に巡りあったよ…」

正直俺は、学校に行くのは諦めるどころか、考えてもなかった…だって俺は、一度レールから完全に外れた人間だから。
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