夢見な百合の花
「えぇっと、みんなも覚えていると思うが、一年半前まで同じクラスだったヒサジ君だ。訳あって、病院に入院していたが、またこうしてみんなと一緒に勉強する事が出来る様になった!それじゃあヒサジ君、改めて自己紹介してもらえるか?」

新学期が始まり、俺はこうして転入生の様な扱いを受けている。

確かに、一年半も居なければ、仕方がないとは思うが、こうやって人前に立つのは見世物になっている様な気がして良い気はしない。俺は適当に自己紹介をして、このショーを終わらせる事にした。

「…ヒサジです。訳あって、最近まで入院していましたが、こうしてまた皆さんと勉強出来るのを楽しみにしていました…えぇっと…どうぞよろしく」

俺の自己紹介が終わると、皆が拍手をして出迎えてくれた。まぁ、社交辞令だろうがな…。

「ヒサジの席はまだちゃんと残っているからな。席が二つ開いているだろ?そこの窓側の席がヒサジの席だ…」

先生は窓側にある、開いている席の窓側を指差した。その開いている席のもう一つは、もちろん俺と同じ時に学校に来れなくなった人物…サヨの席である。

俺は窓側の席に座り、サヨの席を何気なく見つめた。

また昔みたいにサヨと一緒に学校に来る事を考えながら…。

休み時間になると、俺の元には、クラスの人間のほとんどが話しかけてきた。記憶にある人間から、覚えていない人間までたくさん居たが、ほとんどの奴が、俺の体を気遣う内容の言葉をかけてくれた。

彼等からしたら、いきなり居なくなった人間が、こうして一年半ぶりに帰ってきた訳だから、気になって仕方がないのだろう…。

俺は適当に返事をしながら対応していたが、ある人間の言葉に言葉を詰まらせてしまう…。

「ところで、サヨちゃんはどうしたんだ?先生に聞いても何も知らないと言われてよ…」
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