夢見な百合の花
「サヨは…ちょっとな。俺も知らないんだ…」

「ヒサジも知らないのか…ホントにどうしたんだろうな?」

その男の言葉を皮切りに、周りもサヨの話で盛り上がりだした…。俺はどうしてもサヨの事を彼等に教える訳にはいかないのだ。

それは、サヨの病の種類が原因である。心の病気はちょっとした事で、取り返しのつかない結果になりかねない。今のサヨは非常に心が不安定であるので、出来るだけ負担をかけたくないのだ…。

皆に知らせてお見舞いにきてもらうのは、記憶が戻っている状況であれば、良い効果が望めるが、記憶の戻っていない今の状況では、それが望めない。

だから今は、サヨの事を隠しとうさないといけないんだ。

「ちょっと、外に行ってくるわ…」

この状況を変えたいと思った俺は、教室を抜け出し、一人になろうとした。

「じゃあ俺も一緒に…」

悪気はないんだろうが、俺の心読んでいない男子が、俺の後についてこようとする。

「悪い…ちょっと電話したいんだ。校内じゃ出来ないだろ?」

「そうか…解った。引きとめてごめんな!」

「いや…それじゃあ…」

適当に理由をつけた俺は、そのまま校舎の外に出た。もちろん電話をかけるというのは唯の口実だ…。ただ一人になりたかっただけである。

出来るだけ目立ちたくない俺は、校舎の裏手側にある体育館裏に向かって歩いて行った。

だが俺はタイミングが悪かったようだ…めんどくさい状況に遭遇してしまう。
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