夢見な百合の花
「気にすんなって。俺がこの町に呼んだんだからよ…このくらいするのは、まぁ当然だな」

明るい金髪や表情が豊かさが印象的な、二十代前半に見えるこの男。

名前は銀次。

言わずと知れた不良界のカリスマ的存在の男。過去の経歴や年齢などはほとんど不明だが、ケンカの実力や、彼独自の感性による、考え方はジャッジタウンに生きる若者にとって、なくてはならない存在になっている。

ジャッジタウンでは、不良達の生活の補助や相談などものる存在、マスターという特別な役職についている。

「呼んだ…か。あれからもう一年半も経つんだもな…時が経つのは早いな」

ヒサジは久しぶりに見る、ジャッジタウン以外の風景を何気なく眺めながら、そう呟く。

遡ること一年半前…。

人生の分岐点とも言える出来事があった時期である。

血のクリスマスイブ…。

あの日からヒサジの中の時計もサヨの中の時計も止まったままである。

「確かに時が経つのは早いかもな…でも、振り返ると早く感じるだけであって、生活の中で過ごす時間は長く感じるもんだぞヒサジ!」

銀次はそう言うと、ヒサジにある封筒を渡す…。

「これは…」

「その封筒には、大事な書類が入っている。お前の親…孤児院の先生にその書類を渡してくれ」

銀次はそう言って、ヒサジの肩に手を置いた。そして、しっかりとヒサジの眼を見つめ、真剣な表情を作る。

「今日、これからヒサジの止まった時が進みだす。ヒサジと初めてあったあの冬の時の事…覚えているか?」

「あぁ…しっかりと覚えているよ」
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