夢見な百合の花
「まだ死にたくはないな。それと、焼きを入れるならもう十分だろう…そいつにはもう抵抗する力も残ってねぇよ」

タクヤはもう完全にグロッキーの状態である。勝敗で言えばもう決着はついている…。

「……ふん。仕方ねぇ…これぐらいで勘弁してやるよ。ただしコイツはな…」

イサミはそう言うと、タクヤを放り投げ、俺に向かって歩いてきた。やっぱりそうなるか…。

「不良のケンカを止めるって事は、どういう事か解っているよな?…まだ、俺は体力に余裕があるからよ…お前が相手をしてくれよ…」

イサミは意味深な笑顔をしながら俺に近づいてくる…。

「悪いな…今はケンカをしない事にしているんだ。それに俺にはまだ仕事だ残っている…」

俺はそう言うと、意気込んでいるイサミの横を通り抜け、倒れているタクヤの肩に手を入れ、持ち上げた。

俺はできる限り、ケンカはもうしないと心に決めたんだ。ケンカは一度始めると行く所まで行く羽目になるからな。俺もそんなに暇じゃない…こんなケンカを受ける暇はな。

「ちょっと待てよお前…そんな言い訳通じるとでも思っているのか?」

そんな俺の考えを簡単に納得してくれる相手ではないみたいである…。

「通じてもらわないと困るんだよ…これでも病み上がりでね。一年半も入院していて、やっと今日から学校に来れる様になったんだ。そう言う事だから、今回は勘弁してくれよ…」

俺は、イサミの肩に手を置きながら、そう言ってその場を後にした。流石に入院明けの言葉は効いたらしく、俺の後を追いかけてくる事はなかった。
< 21 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop