夢見な百合の花
本当は名前だけは知っているが、この場は知らないフリをした方が得策だろう。変な面倒事をしょい込むのはごめんだからな…。

それに…。

「それに、本人に聞いた方が、早くないですか?」

やられた本人がこの場に居るんだから、俺に聞く必要はないだろう…。

「それもそうね…って君、もしかしてヒサジ君なの?」

保健の先生は少し驚いた表情で俺に聞いてきた。

「そうですけど…何か?」

「いえ…用ってほどの事ではないけど、少し驚いてね。…もう出歩いて大丈夫なの?」

「……?」

保健の先生は、俺を心配そうな顔で見つめてくる。一体、どういうことだ?

「あなた、暴漢にあった時の怪我が原因で脳内出血起こして、下半身不随を起こしかけたらしいじゃない。この一年半のリハビリで何とか日常生活が出来る程度に回復したって、カルテには書いてあったわよ?」

そうか…保健の先生だから、俺の怪我の書類に目を通していてもおかしくはない。あの全くなでたらめの書類を信じているのか。

「…まぁ、もうこの通り、全然大丈夫ですよ。心配には及びません!俺なんかよりも、今はアイツの怪我を見てあげて下さい」

俺はあえて元気なフリをした後、この話をそらした。ボロを出しかねないから…。

「そうね…解ったわ。でも、もし何か身体に異変を感じたらすぐに保健室に来るのよ?」

「…その時はそうします」

こないとは思うけどな…。
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