夢見な百合の花
それを代わりに他の先生が追いかけている…。

単純…そしてアホ。

逃げ出したって結果は変わらない…だっていつか捕まるから。そして逃げた時間に比例して説教の時間が伸びるだけだ。

あの行為に意味は皆無…でも。

「…楽しそうだ」

無意識に、小さい声で呟いてしまった。誰も俺の声に反応はしなかったが、俺は自分の口を押さえた。

楽しそう…あれが?

俺はそう感じたのか…あの馬鹿げた行為を。

俺はその後、あいつ等が先生に捕まるまでの間、その光景を目を離さず見ていた。

始業式の日なのに、6時間きっちり授業をすると、今日の学校の予定は終わった。

勉強道具を片付け、俺は帰ろうとすると、教壇に居た担任が俺の席まで歩いてきた。

「ヒサジ!ちょっと聞きたいんだが…」

まずい…怪我の事を聞かれたら、俺は何も答えられんぞ。

「…何ですか?」

俺は少し警戒しながら、先生の返事を待った。

「いやな、勉強についてこれているか心配になってな…しばらく勉強所ではなかったと思ってよ。どうだ?大丈夫か?」

勉強の事か。それは…

「…全然ついていけてません。」

嘘を言っても、テストでバレル…。俺は素直に理解出来ていない事を先生に話した。

「やっぱりか…まぁ仕方がないんだがな。そうか…どうだ?これから毎日補習を受ける気があるか?先生で良かったら、教えてやるぞ?」

先生は向いの席に腰を下ろすと、笑顔で俺に訪ねてきた。

補修か…俺としたらかなりあり難い話だ。学校に来ると決めた以上、勉強からは逃げられない。だったら、自習をするより先生に教わった方が、覚えも早いってもんだ。

でも…。

「済みません…この後、行かなくちゃいけない所があるんです」

補習を受けたら、帰るのは7時過ぎになる。そうなると、毎日サヨの見舞いに行く事が不可能になってしまう。
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