夢見な百合の花
それだけはあってはならない。

折角サヨの小さな心の隙間に入り込む事が出来たのに、日を開けてしまうと、その光を閉ざしてしまう事になる。

サヨの心をこじ開ける。その第一歩が無くなると、道は無くなってしまうんだ。

「うーん…それはそんなに大事な事なのか?学校の勉強よりも?」

先生は食い下がる事無く、俺を言い聞かせてきた。

「えぇ…俺にとっては、何よりも大切な事なんです。先生にそう言ってもらえるのは嬉しいんですが、俺は大丈夫です…」

俺は先生の提案を断った。勉強はいつでも出来るから…。それに、高校に行く方法はいくらでもある。

一年待ってから高校を受験したって良いんだしな。

「ヒサジがそこまで言うのなら、仕方がないな。でも、先生は諦めないぞ!勉強を教える方法はまだあるからな」

先生はそう言うと、俺の肩をポンと叩き、立ち上がる。

「一週間待ってくれ。その間に準備を済ませとくから…」

「一週間?」

「おう。受験も近いし、ヒサジだけ授業に着いてこれない状況はすぐに解消しないといけないからな。先生に任せとけ」

先生はそう言って、教室を後にした。意気揚揚と…。

うちの担任ってこんなにお節介な人だったけっか?あんまり記憶にないんだよな…。

俺は掃除の邪魔をしないよう、席を後ろに下げ、教室を後にした。
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