夢見な百合の花
全くめんどくさい…。

学校を出た俺は今、病院に向かっている。これに関しては全く問題はないんだが…。

「…いつまで着いてくるつもりだ？」

俺は後ろを振り返る。すると、さっきまで校門でたむろしていたイサミ達が、俺の後から着いてきているのだ。

「俺もこっち方面に用事があるんだよ。お前に着いて行っている訳じゃねぇ…」

「だったら、先に行ってくれ。後ろから着いてこられるのは気分が悪い…」

次第にこの状況にイラついていた俺は、軽いケンカ口調になってきてしまった。当然、俺の口調はイサミの神経を逆なでる…。

「ほう…俺が邪魔くさいってか？随分な言い方じゃないか…」

「別にお前は目上でも何でもないんだ。敬語を使う義理はない…」

足を止め、静かに向き合った俺に、イサミ達は取り囲む様な陣形を取り出す。だが、此処は道のど真ん中。しかも、学校の通学路でもあるので、人通りが多い。

うちの学校の生徒達が遠巻きに俺達の様子を窺っていた…。

そんな時だ、道路沿いに一台のバイクが止まったのは。フルフェイスのメットを被った男は、俺達の様子を確認し、バイクから降りてきた。

イサミ達は、怪訝な表情でその男を見つめている。

そして、その男がメッドを外すと、俺だけがその人間が誰かを理解した。

「何やってるんだヒサジ。こんな所で…」

バイクの運転手はカズヤだった。カズヤは乱れた髪を手グシで直しながら、俺達に近づいてきた。

「何でもないよ。それよりこれからサヨの所に行こうと思っているんだ…送ってってくれよ」
< 31 / 132 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop