夢見な百合の花
次の日俺は、朝早く登校したんだ。夜、全然寝付けなくて、結局は徹夜をするハメになり、早く来てしまったのだ。

教室に来てみたが、当然まだ誰も来てはいない。俺は自分の席に腰掛け、ただひたすら時間が経つのを待っていた。

その間、俺は自分の意識の中に、自分の心を移す…目を瞑り、色濃く残っているあの日の自分を思い出す為に。

孤児院…サヨの両親の事故…中学校に進学………クリスマスイブ…。

サヨと会ってからの記憶は、俺の中に根強く残っている。そのどれもが俺の大切な思い出…。

昔から順に思い出せ。俺は何かを見落としている筈なんだ…。

寝ている訳でもなく、起きている訳でもない。俺の心の中…つまりは記憶の扉を開いていた。

「…ヒサジ?…ヒサジ?起きろ?」

誰かの声が聞こえ、俺は意識を外に戻した。

「…寝てません」

「じゃあ返事くらいしてくれよ。出席取っているんだからよ…」

出席?…もうそんな時間か。

「…はい」

先生は呆れた表情で俺を見つめていた。他のクラスの面々も、俺の反応を見て笑い声を上げる。

だが俺は、残念な事にとても笑える様な状況ではない。かと言って、怒る気もない…俺は特に気にする事なく、また考えにふけっていた。

一時間…二時間…時間は進み、昼飯の時間になった。だが俺は、腹も減ってはいなく、皆で和気あいあいとご飯を食う気にはなれなかった。
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