夢見な百合の花
俺が孤児院に帰ってきた次の日、俺とカズヤはある病院に向かった。

ある病院…そう。サヨが入院している病院に…。

俺の町にある、一番大きい大学病院。内科から外科まで幅広く受け付けている病院なだけあって、かなり大きい病院である。

そして俺は、カズヤの後に続き、ある病棟に向かう。

精神科病棟に…。

サヨの病…それは心の病気。

PTSD…心的外傷後ストレス障害。過去の辛い出来事が原因で、体に機能障害や、記憶障害を起こすれっきとした病気。

トラウマを突き詰めた呼び名。サヨはその病気の重症患者だった…俺が原因で。

エレベーターに乗り、少し歩く。そしてある病室にたどり着いた。

「着いたぞヒサジ…ここに来るのは、一年半ぶりか?」

「あぁ…」

俺は過去に一度だけ、この病室に来た事がある。一年半前…俺もこの病院に入院していた頃に一度だけな…。

「…入るぞヒサジ。準備は良いか?」

カズヤは俺に準備は良いかと聞いてきた。カズヤは知っているからな…俺が過去に、この現実に耐えきれなかった事を。

それを加味した上で俺に確認をとったのだろう…だが。

「準備はジャッジタウンで済ませてきたさ…俺が開けるよ」

現実と向き合う覚悟は出来ている。今さら尻込みする気はない…。

俺は、軽くノックをした後、ドアを開いた…。
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