夢見な百合の花
「解ったわ…良いから、とりあえず落ち着きましょ?」

加藤先生は、そう言ってサヤちゃんの背中をゆっくり擦る。俺はサヤという女の子はそれで、落ち付くと思っていた…だが。

「はぁっ!はぁはぁっ!」

サヤは呼吸を落ち着ける事なく、先ほどよりもさらに、呼吸を乱していた。流石に、俺もサヤの異変に気づく…。

明らかに、過呼吸になっていると…。

「サヤちゃん落ち着いて。そんなに息を吸ってはダメ…ゆっくり息を吐いて?」

加藤先生は、サヤの急激な変化にも動じる事なく、冷静に対処していた。自分もゆっくりと深呼吸する事で、サヤの呼吸の手助けをしている…。

サヤはその動作をマネするように、ゆっくりと息を吐いていく。そしてゆっくりと息を吸う…それを数回繰り返すと、サヤの呼吸は落ち着いてきた。

「ごめんなさい…先生…もう……大丈夫ですから」

サヤはそう言うと、保健室にあるイスに腰掛け、軽く胸を押さえながら深呼吸を繰り返している。

「…一体どうしたんだ?差し支えなければ教えてくれないか?」

どうしても気になる。サヤのあの反応が…。

「…私…対人恐怖症なんです。」

対人恐怖症?聞いた事ぐらいはあるが…

「人が怖いって事か?」

「はい…いつからか、人と話したりする事に違和感を感じる様になったんです。…私、話上手じゃないから、クラスの人と何を話していいか分からなくなってきて…気がついたら、人前で凄く緊張する様になったんです…」
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