夢見な百合の花
人と話す事に緊張を感じる…か。

「今も、治っていないんだな…?」

「はい…今では、教室に入る事も出来ないんです。見られるのが辛くて…私の顔が変なんじゃないかとか、何か人と違う癖があるんじゃないかとか…それらを考えると、呼吸が出来なくなるんです…」

サヤは、小さい声でだが、はっきりと俺の耳に聞こえる声で、俺に話してくれた。恐らくこの俺との会話にもストレスを感じているんだろうな…。

この子はこの子なりに頑張っているんだ。心の病と闘いながら、それでも前に進むために…。

「そうか……さっきは済まなかったな。辛かったろう…?」

「いえっ…そんな事はないです。……私が…変なんです…」

サヤは、ぎこちない笑顔ではあるが、俺の意見をしっかりと否定していた。

「変ではないだろう…人それぞれ何かに対して恐怖は持っているものだ。自分に自信を持ったところで勘違いだったなんて良くある話だ。でもな…」

この子にはこの加藤先生が着いている。それに、自分で前に行こうという意思をちゃんとある…俺とは違ってな。

「自分の弱さを認める事が、自分自身が本当に強くなる第一歩だと俺は思う。弱点を受け止め、その上で立ち向かう…そうして、自分の弱点を克服していくんだ」

俺は柄にもなく、初めてあったこの子に、熱弁していた。弱さを認める…その上で、自分の弱い所と立ち向かっていく。

この言葉は、俺が現実に背を向けていた時に、前を向かせてくれた言葉だ。

この子にも、立ち向かってもらいたい。何故なら……この子が昔の俺に似ている様な気がしたから。

そして、今も恐怖に苦しんでいる、サヨに似ていたからだ…。
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