夢見な百合の花
「…はい。頑張ります」

サヤは、俺にしっかりと、返事を返してくれた。ほほ笑む様な表情で…その顔には、先ほどの怯えた様な雰囲気は感じられない。

「弱さを認めるか…良い事言うわねヒサジ君。その言葉、今度私も使って良い?」

加藤先生は、楽しげに俺とサヤとの会話を聞いていた。

「…好きにして下さい。俺も受け売りの言葉なんでね…」

銀二さんが俺にくれたこの言葉。俺に力を与えてくれる言葉だ…俺の中では、一番の名言と言っても過言ではない。

この言葉が他で生かせるなら、俺も悪い気はしないからな…。

「それじゃああり難く貰うわね…それにしても、サヤちゃん!ヒサジ君とは会話出来るんじゃない!」

「…そうですね。さっきは少し怖かったですけど、今は全く怖くないんですよ…何ででしょう?」

どうやら、サヤは俺の事を怖いと感じない様になったようだ。対人恐怖症と自覚をしているし、実際そうなのに、初めて会った俺の事をどうして…。

サヤはその後少し考えていたが、どうやら結果が出たみたいで、その理由を話しだした。

「多分…ヒサジさんが、私の病気の事を認めてくれたから…かもしれないですね。…同世代の人で初めてだったから…私の病気を信じてくれたのは」

信じてくれたのは俺が初めてか…凄く重たい言葉だな。きっと、同世代の奴等には理解されなかったんだろうな。

俺もサヨが病気にかかっていなかったら、信じていなかったと思うから。

でも今は違う…心の病気がどれだけ大変かを知ったから。そして、どれだけ治すのに苦労するのかも。

「俺も身近に同じ心の病気に苦しんでいる人がいるからな…でも、俺には本当の意味では理解は出来ない。でも、少しは手助けが出来るかもな…」
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