夢見な百合の花
それもそうだな…。

「それにしても、君は思っていた以上にケンカ馴れしているみたいだね!あのイサミのケンカパンチを冷静に避けるなんて、なかなか出来る事じゃないよ?」

男は、俺の傍まで来ると、そう言ってきた。実に楽しそうに…。

「…そんな事はないさ。俺は、精一杯逃げてみただけだ…」

「いや、違うね。君は、イサミの拳を最後まで目を閉じる事なく見ていた…普通の人間はそんな事出来はしない」

この男…そこまで俺を観察していたのか。どうやら曲者は、イサミだけじゃないようだな…この男はある意味イサミより厄介な気がする。

「お前…名前は?」

「俺かい?俺はヒデって言うんだ!よろしくな」

ヒデはそう言うと、最後に俺に笑顔を向け、こっちに向かって走ってくる先生に背を向けると、自分の教室の方向に歩いて行く。

俺はその様子を確認した後、教室に戻ろうとしたが…先生に捕まった。

その後、何があったか色々聞かれたが、俺は適当に話をはぐらかしたんだ。俺を含め誰も怪我をしていないし、先生に助けてもらおうなんて気はサラサラないしな…。

それに、イサミの拳が俺の顔に迫ってきた時、俺の中の血が少しうずいたんだ…。

威力だけならそこそこあるイサミの拳…おそらく敗北を知らないであろう、イサミの拳には、少なからず気迫を感じた。

あの拳は、人を壊せる威力だある…素人限定だがな。
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