夢見な百合の花
正直勉強なんてやりたくない。だが…。

「解りました…やってみますよ」

少ない時間に仕事の合間を使って、これだけの教材を用意してくれたんだ…やらない訳にもいかない。

それに、遅かれ早かれやらなくちゃいけない時がくる。

だったらやってやる。

俺は、職員室を後にすると、帰る準備をした。置き勉なんて出来ない俺は、教材を全部持って帰らないといけない…結構な重量を背中に感じながら、校庭を歩いていると…。

「やぁヒサジ!ヒサジぶりだね?」

今まで顔を見せなかったヒデが、俺の前に現れた。

「…何の用だ?」

見る限りは、一人でいるヒデ。イサミの姿はどこにも見当たらない…。

「実はね、イサミがヒサジとケンカをしたがっているんだよ!準備は整ったんで、俺が迎えに来たんだよ…」

「そうか…残念だが、俺も暇じゃない。お前らの暇に付き合っている時間はないんだ」

ありえない量のプリントが俺を待っているしな…。

前は、やり合っても良いと思っていたが、今は事情が変わった。俺は、ケンカをやんわり回避し、家に帰ろうとしたんだが…。

「…サヨちゃんの事かい?」

「っ!?」

ヒデの口からサヨの名前が出てきた。俺は、思わずヒデの顔を凝視してしまう…。

「図星みたいだね!…どうして知っている?みたいな顔をしている様だけど…覚えていないかい?君は自分で俺に教えたんだよ?」
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