夢見な百合の花
「簡単だよ…君の孤児院の先生に聞いたんだ。サヨさんの調子はどうですかって…それだけで、情報は手に入る」

院長先生に聞いただと?そんな事一言も言っていなかったが…。

ヒデは俺の疑問をよそに、説明をし始めた。

「情報を手に入れる時、ある程度予測を立てた状況で聞くのが一番効果的なんだ。俺は、サヨちゃんが、君と同じ場所で暮らしていることを知っていた…そして、君は、サヨの元に送ってほしいと言ってたんだ。これだけ状況が揃えば、予測は簡単に立てられる…約二年間も学校に顔を出していないのも含め考えるとね…どこかの病院で入院している事は」

こいつの言っている事は、とても的確だ。そして、自分の不注意な発言に腹が立ってくる…。

こいつ等は…サヨをおとりにしようと考えている。

「もういい…イサミはどこだ?殺してやるから、案内しろ…」

「…話が速くて助かるよ」

俺は、ヒデの後に続き、学校を出た。こいつ等が何も考えているかは予想がつく…。

イサミはあの性格だ…俺がこの勝負に応じなければ、サヨに何をするか分からない。サヨの入院している病院がバレ、恐らく病気についてもバレているだろう…。

だったら俺はそれを阻止しないといけない…仕返しを考えさせないぐらい徹底的にな。







この場所にイサミは居るのか…。

よりによって、この場所とはな…知っててこの場所を選んでいたとしたら、タダじゃおかねぇ。

ヒデに連れて来られた場所は、建設途中で中止になった、建物…俺やカズヤが過去に死にかけたあの、クリスマスイブの場所だった。

ヒデの後に続き、中に入って行く…階段を上り、通路を進み、また階段を上る。

そしてたどり着いた場所は、一番広い空間がある場所。俺にとっては、忘れられない記憶…サヨが壊れた場所だ。

そこには、すでに10人ぐらいの人間が待ち構えており、その中心にはイサミが堂々と俺を出迎えていた。
< 61 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop