夢見な百合の花

「てめぇは一々、ムカつくやろうだな！てめぇも血祭りに上げてやるよ！」

イサミは俺に向かって殴りかかってきた。

だが、俺はイサミよりも先に動いた。拳が迫って来る前に、懐に踏み込み、顔の横っ面を右肘で殴る。

しっかりと腰を入れ、左腕を内側に巻き込み、威力を殺さないように…。

狙いは、テンプル。この一撃で、意識を切り取る事が出来た筈だ…でも、これでは終わらせない。膝が落ちた体を左手で、襟首をつかむ事で支え、アゴ下から掬いあげる様に、手の平で、打ち抜く…。

意識が飛びかかっている状態で、脳を縦に揺らしてやった…一時的に、意識は回復したはずだ。足には力が入らないと思うがな…。

イサミは何が起きたか解っていない様子だった。瞳孔が小刻みに揺れている…どうやら、視界はぐちゃぐちゃの様だ。

「どうした？まだ始まったばかりだぞ？」

これで終わらしてもいいんだが、それでは意味がない…こいつの為にならないからな。

俺は、手をついて、座りこんででいるイサミの頭を持ち、足をを後ろに引いた…そして。

「やめるんだヒサジ！それはだめだ！」

ヒデは俺が何もしようとしているか解ったようだ。だが、これはこいつが望んだケンカだ…何が起きようとも、コイツの責任なんだよ。

俺は勢いをつけて、イサミの顔面めがけて膝を振りぬいた…あたりに鈍い音が響き渡る。

「イサミ！！」

ヒデが、力なく倒れ込んだイサミに近づく…そして、イサミの顔を見て驚いた顔をした。

「鼻が…潰れていない」