夢見な百合の花
するとヒデは、気まづそうに頭をかくと、イサミに視線をむけた。イサミは、その視線を受けて、何かを悟ったみたいで、大きく頷く…。

その言葉ではないやり取りを終えるとヒデは、俺の方に向いた…。

「そこまでお見通しなら、正直に言おう…別に隠していた訳ではないしな」

ヒデはそう言うと。俺の方に歩んできた。イサミも、静かに立ち上がり、俺の方に歩んでくる…。

そして、俺の目の前までヒデが来ると、静かに話しだす。

「俺の親父は元々プロのボクサーだったんだ。今は、ジムを開いているんだが、今までプロのボクサーが出た事がないんだよ…」

「父親が、プロのボクサーか…なるほどな」

パンチを見切る能力。そして、さっきの説明は、元を辿ればボクシングの技術でもある。普段から、パンチの質や効率を意識して見る癖を持っていれば、俺のケンカの癖を見切るのも、そんなに難しい事ではないだろう…。

するとここでイサミが、俺に話しかけてきた…。

「ヒサジ…実は俺がケンカで強くないは知っていた。ヒデの親父さんとは昔から知り合いで、俺に格闘技の才能がない事も言われていた…でも俺は納得出来なかった。学校ではケンカで負けた事がないのに、才能がないって言われても納得できないだろう？」

その気持ちは解らなくもない…。自分の実力を発揮できない環境では、自分の才能を確かめようがないからな。

「俺は、プロのボクサーになってみたかった。でも、ヒデの親父さんには、入門を許してもらえない…まだ中学生の俺には、危険すぎるからってな。だから、俺は…」

イサミはそう言うと、急にうつむき、言葉を区切った。
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