夢見な百合の花
なんとなくだが、話が見えてきた気がする…。

男は少なからず、強さに憧れる。イサミが格闘技に興味があるって気持ちも恐らく簡単な気持ちで言っている言葉ではないだろう…。

そして、ヒデの親父さん…会った事はないが、イサミの気持ちを知っていて、あえて才能がないって言ったんだろう。

それは恐らく…。

「イサミ…お前はやはり、才能がない。ケンカと格闘技は違うって事に気付いていない限りはな…」

才能なんて簡単な言葉で片付けたくはないが、俺にでも解る。ヒデの親父さんの言いたい事が…。

イサミは俺の言葉に反応し、うつむいていた顔を上げ、俺を睨みつけてきた。

「知った事言ってんじゃねぇよ!お前に何が解るって言うんだよ?少しケンカが強いからって…」

「そうだ…俺は人より少しケンカが強いだけだ。そして格闘技は、ケンカとは違う…しっかりとしたルールがあり、言ってしまえばスポーツだ。強い人間が必ず頂点に立てるケンカとは根本が違うんだよ」

世の中で活躍している人間は、全てルールに法った世界で活躍している。

そして、格闘技も例外ではない…限られた条件で、戦うからこそ、見ている人間が感動出来るんだ。

「イサミ…お前が、本当にボクサーになりたいと思っていたのなら、何でこんな事しているんだ?もっと違う事に時間を使うべきだったんじゃないのか?」

俺は、格闘技の事なんて知らん。でも、俺もケンカで強くなるために、色々努力していた事もあった。

筋トレや走り込み…今でも俺は、定期的にやっている。だが、イサミがトレーニングをやっていたとは思えない。

「……くっ」

イサミは何も言わない…苦虫をかみしめた様な表情をしている。

「ヒデ…お前は知っていたんじゃないのか?格闘技とケンカの違いを…」

「あぁ…もちろん知っていたよ」
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