夢見な百合の花
当然この行為は、サヨが俺に対して行っている嫌味などではない…。

サヨにとって俺の存在は、見た事がない『人』でしかなかったのだ。ただ、知らない人間が自分の部屋に来て、不思議がっていただけ…。

その現実が、俺の心にずっしりと圧し掛かってきた。

「ヒサジ…そんな所で突っ立ってないで、こっちに来いよ。サヨにお土産があるんだろ?」

カズヤはサヨに手を引かれながら、俺の方に振り返り、そう言ってきた。

「あっ?あぁ…そうだったな。お土産な…」

病院に来る途中に買ってきたお土産。サヨの病室にもたくさん置いてある、可愛らしいお土産を俺は買ってきた。

「サヨ、ヒサジがお土産を買ってきてくれたんだ!サヨの大好きなお土産だぞ?」

カズヤはサヨにそう言うと、俺が来るのを待っていた。

また、不思議そうに俺の顔を見ているサヨの元に意を決して俺は近づく…。自分でも心臓が大きく高鳴っている事に気づいた。

俺は怯えているのか?そう思うと、自分が情けなくなってくる。

サヨの近くに寄ると俺は、軽く屈みながら震える気持ちを奮い立て、言葉を発した。

「大した物ではないんだが…これを受け取って貰えるか?」

俺は、店の店員に綺麗にラッピングしおてもらった包みを、サヨに渡した。
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