夢見な百合の花
イサミはそう言うと、俺の肩に腕を回し、馴れ馴れしく笑顔で俺に頼んでくる。

「そんなもんは、同じジム生に頼めよ。俺に頼んだって仕方ないだろう…」

「みんな高校生以上で、体格が違いすぎるんだよ。一緒にやろうって言っても、まともに相手してもらえないし…正直困ってんだわ」

そりゃあ中学生相手に、スパーなんて出来ないわな。それに、イサミはボクシングを習ったばかりで、ジャブすらまともに出せないだろうし。

「俺だって、ボクシングなんてやった事ないから、練習相手になんてならないよ。それに今はそんな事よりも、基礎をしっかりやって、基本を身につける練習をした方が良いだろう…」

「ヒサジも会長と同じ事言うんだな…。俺も解っちゃいるんだけどよ、筋トレや走り込みばかりじゃ、気が滅入るんだよ…ケンカもしないって約束しちまったしな」

イサミはそう言うと、「なぁ行こうぜぇ!」と言いながら、俺の隣でわめきだす…。

どうやらイサミは、ケンカをしないという約束をちゃんと重く考えているようだ。この調子だと、本当にケンカを辞めた様だな…。

俺は自然と、そんなイサミの様子に笑みが出る。

「俺なんかに頼まないで、ヒデに頼めよ。アイツの方が、ボクシングなら強いはずだろ?」

親がプロのボクサーで、あれだけ目がきくんだ。ボクシングの才能はかなりの物があるだろ。

「ヒデが相手になってくれるようなら、ヒサジに頼んだりしねぇって。あいつは、俺のトレーナーにはなってくれても、スパーの相手はしてくれないんだよ」

「ヒデがイサミのトレーナーをしてるのか?」

ヒデがトレーナーか…。向いている様な気はするが、プロのリングに上がった事もないのに、ちゃんと出来るのか?
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