夢見な百合の花
「どうするんだヒサジ。助けるなら、早い方がいいぞ…あの子…かなり動揺している」

イサミはそう言うと、視線を鋭くさせ、俺に呼びかけてきた。

確かにサヤは、手を口許に持っていき、小刻みに体を震わせている…時間はなさそうだな。

「あぁ…ちょっと行ってくる」

「おい、待てヒサジ!俺も行くよ…」

俺は、学校内を走って行った。階段を走りぬけ、急いで玄関に向かう。後ろからは、イサミが走って追いかけてくる…その様子に他の生徒が、驚いた様子で俺達…おもにイサミを凝視している。

急いで靴を履き、校庭に向かって走って行くと、サヤ達の近くにたどり着く。俺は取り合えずは、様子見に入る…。

「足速いなヒサジ…ビックリしたぜ」

イサミが俺に追いつくと、少し息を乱しながら、俺に話しかけてきた。

「そんな事より、ちょっと静かにしてろ…話声が聞こえない」

問答無用に飛びかかる訳にもいかないからな…。俺は、気づかれない程度に近づくと、物陰に隠れ、話声に耳を傾けた…。

「ねぇ、サヤちゃん。お願い出来るでしょ?」

「……はい。…解りました」

「流石サヤちゃんだ!良い友達を持って助かるよ。じゃあ、近くの公園で待っているから、頼むね…」

そう言うとサヤと話していた連中は、高笑いを上げると、校門のところに歩いて行った。

「何だ?別に、物騒な会話の内容じゃなかったな…何か頼まれていたようだけどよ」
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