夢見な百合の花
イサミはそう言うと、不思議そうに考え込んだ表情をしている。だが俺には、何となく話が見えてきた…。

俺は物陰から出ると、立ちつくしているサヤに声をかける。

「何があったサヤ?」

サヤは驚いた様子で、俺に振り返ると、激しく動揺した。

「ヒサジさん!?…なっ何でもないですから!」

サヤはそう言うと、地面に置いていたカバンを持ち、走り去ろうとする。だが俺は、サヤの腕をつかむと、それを阻止する。

「何でもないなら俺に話してくれサヤ。アイツ等に何を頼まれた?」

察しはついている…だが、憶測で動く訳にもいかない。俺はサヤの眼を見つめながら、問いかけた。

するとサヤは、急に俯き…そして泣き始めた。嗚咽をもらし、肩を震わせながら…それでもはっきりと俺に教えてくれた。

「……お金です」

「そうか……良く解ったよ」

俺は、小さく嗚咽をもらしているサヤの肩を優しく掴み、学校内に入った。

このままアイツ等の所に行ってもいいんだが、サヤをこのまま一人にさせる訳にはいかない。俺は、サヤを保健室に運ぶ事にした…。

保健室に着いた俺達は、加藤先生を探したんだが…。

「いないな。職員室に居るんじゃねぇか?」

イサミは、適当に保健室を見まわすと、そう呟いた。

「らしいな…イサミ。ちょっと加藤先生呼んできてくれないか?」
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