夢見な百合の花
「多分大丈夫だ…いつもの事だしな。それじゃ行ってくるわ！」

ヒデはそう言うと、そそくさと保健室から出て行こうとする…。

「あの…今日はありがとうございました！」

サヤは出て行こうとするイサミを呼びかけると、少し躊躇した後、勢いよく頭を下げた。

するとそれを見たイサミは、少し驚いた様な表情をした後、ぽつりと言葉を返した。

「別に礼を言われるほどの事はしてねぇよ。礼を言うならヒサジに言いな…俺は俺のしたい事をしただけだからよ」

そう言って、イサミは保健室から出て行った。

「イサミさんのしたい事…？」

どうやらサヤはイサミの言った事が、何なのか理解が出来なかったみたいだ。

「イサミは一応、この学校の頂点にいる不良だ。つまりはそのメンツがイサミの行動の理由だったって言いたかったのさ…」

不良ならではのプライド…調子に乗っている人間がいれば、ヤキを入れる。

自分の判断で間違っていると判断すれば、そいつを断罪する。

学校の頭であると言う事は、一国の王様であるという事だ。

酸いも甘いも責任がある…頂点に居る人間ってのはな。

「そうなんですか…でも……助けてくれたのは間違いないですよね？」

「あぁ…それは間違いないな」
< 82 / 132 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop