夢見な百合の花

俺はこの後、加藤先生に簡単な挨拶をした後、サヤと一緒に帰る事にしたんだ。サヤは一人で帰れると言ったのだが、加藤先生が念のために送ってあげて欲しいと言い、俺がそれを引き受けたんだ。

俺とサヤは学校を出た後、しばらくは無言のまま歩いていたのだが、サヤが急に口を開いたんだ。

「そう言えばまだお礼を言ってませんでしたね…今日は本当にありがとうございました。」

「別に礼はいいよ。イサミが言っていた様に、礼を言われるような事ではないしな」

「でも…私はヒサジさんや、イサミさんのおかげで本当に助かりました。もしあの時、声をかけてもらえなかったら……私…」

そう言うと、サヤはまた声を震わせ、うつむいてしまう。

俺にはサヤの恐怖が理屈では分かっても、本当の意味では理解ができない。あのような場面に出くわしても、怖いと思うことはないだろうし、最悪ケンカになっても、負けない自信があるから。

でも、サヤにとってはこの上ない恐怖なんだろうな。

「そうか…じゃあ一つ俺の頼みを聞いてもらえないか？」

「はい…何でしょうか？」

この時のサヤは、何かお礼がしたい…そう言っている様な気がした。

なので俺は思い切って、聞いてみたかった事を、サヤに聞く事にした。