夢見な百合の花
こうやって、女の子の頭を撫でていると、昔の記憶がフラッシュバックしてくる様だ。

まだサヨが俺の事を覚えていた頃、よくこうやって頭をなでていた…。俺の固い髪質とは違い、サヨの髪の毛は柔らかかったんだ。

それが凄く触り心地が良くて、何かあるとすぐに、触っていたっけか…。

「なぁ…俺も少し昔の話をしていいか?」

「?はい…私なんかでよければ話して下さい」

サヤはそう言うと、真剣な表情で俺の方を向いた。俺はサヤの返事を聞くと、昔の話をしたんだ。

俺は親がいなく孤児だった話や、サヨやヒサジの話…。楽しかった思い出の話を思い出せる限り、ゆっくりとサヤに話した。

サヤはというと、こんな長ったるい俺の話を、凄く楽しそうに聞いてくれている。それどころか、時折質問を交えてきたりもしていた。

「サヨは俺にとって、かけがいのない存在だった。その思いは日に日に強くなっていってて、収まる事はなかった。そして俺は心に誓ったんだ…俺がサヨをあらゆる障害から守るってな」

「素敵な話ですね…そのサヨさんが羨ましいです」

羨ましい…か。

「でも……俺は、サヨを守る事が出来なかったんだよ」

「えっ?」

今までの楽しい表情が嘘のように、サヤが俺の言葉に表情を曇らした。

そしてあの日の事をサヤに話した。

あのクリスマスイブの話を…。サヨを守りきれなかった時の話しをな。
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