夢見な百合の花
サヤはそう言うと、一つの答えを俺に教えてくれた。

「記憶を失っているのではなく、違う記憶がサヨさんの心を支配している…多重人格障害ではないでしょうか?」

「多重人格障害…サヨが?」

人格が違う……そんな事が本当に…。

「……そうかもしれない」

思い返せば、思い当たることが沢山ある。

昔のサヨにはなかった、表情の豊かさ…昔のサヤは、誰にでも笑顔を振りまく女の子ではなかった。

自分の気を許した人にしか、本音も笑顔も振りまく事はなかったんだ。

それにサヨは、あそこまでぬいぐるみに執着なんてしていなかった。

今のサヨは昔のサヨとは全然違う…まるで人が変わったみたいに。

「何か、ヒントが見つかりましたか?」

俺の表情の変化を見た、サヤが少し嬉しそうな表情で俺に聞いてくる。

「あぁ!十分過ぎるぐらい、見つかったよ。サヤのおかげだ…」

「少しでもお役に立てたのであれば、嬉しいです」

少しなんてもんじゃない。これは大きな進歩だ。

恐らく、サヤの考えはあっている。良く考えれば、サヤはあの時、俺が死んだとひたすら呟いていた。

……そうだ。あの時、サヨは言っていたんだ。

俺の身を案じる言葉ではなく、『死んだ』と…。

「ありがとうなサヤ…後は、俺が何とかするよ。そろそろ帰ろうか?時間も遅いしな…」

「はいっ!」
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