夢見な百合の花
俺はこの後、適当に挨拶をすると、カズヤの元に案内すると言われ、後について行った。

建物は、割と綺麗な内装がしてあり、病院に近い作りをしていると俺はこの時、思ったんだ。

「そんなに以外かい?」

そんな俺の様子を見ていた、安藤さんは、俺に話しかけてくる。

「えぇ…もっと、重々しい雰囲気をしていると思っていました。刑務所みたいに…」

俺の少年院のイメージでは、未成年が入る刑務所だ。つまりは、石壁に囲まれもっと重々しい、冷たいイメージだったんだが…この雰囲気を見る限りでは、学校の様な感じがする。

「ははっ…始めて来る人は、みんなそう言うよ。でもね、ここは刑務所ではなく少年院なんだ。ヒサジ君は、少年院がどういう所か知っているかい?」

「いえ…全く知らないです」

俺がそう答えると、安藤さんは俺に少年院の事を話してくれた。

「少年院は、社会で生きて行く為に、必要な教養を養う為の法務省所管の施設なんだ。つまりは、裁く為の施設ではないのさ…職業訓練や生活指導など、社会更生が一番の目的なんだよ」

更生が一番の目的か…何か。

「…ぬるいな」

「っえ?何か言ったかい?」

安藤さんは、俺の呟くような声に反応した。

「いえ、何でもありません」

俺はそう言うと、口を閉ざし安藤さんに先を促した。安藤さんは不思議そうな顔をしながらも、俺の前を歩いて行き、俺は後に続いて行った。

生活指導や職業訓練は大いに結構だ。だが、俺にはどうしてもケイタがこんなぬるい施設で反省するとは思えない…。

あの時の狂気に狂ったケイタの眼…友達のカズヤを何のためらいもなくナイフで刺して喜んでいたあの男が、こんなぬるい場所で反省なんかするとは俺には到底思えないんだよ。
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