夢見な百合の花
またしてもケイタは、俺に対する挑発ともてれる言動を口にした。

どうやら、相当俺を怒らせたいようだな…。だが残念だったなケイタ…もうその強がりは俺には通用しねぇよ。

「遊びねぇ…それにしては、随分とこだわっている様に俺には見えるがな」

「ふん…想像に任せるよ。そんな事より、要件はなんだ?答えてやるから、早くしてくれ…俺も暇じゃないんでね」

ケイタはそう言うと、ふんぞり返り、背もたれに背中を預けながら、聞いてくる。

どうやら、俺の予想通りケイタはあの時の事にこだわっているようだ。挑戦的な言動は相変わらずだが、ケイタは話をはぐらかした。

要件を促し、自分の心情を悟られたくなかったんだ。

「そうだな。俺もそんなに暇じゃないから、さっさと話を進めたい…俺が聞きたいのはただ一つ。あのクリスマスイブの日、お前等はサヨに何をした?」

俺とカズヤがあのビルに駆け付けた時、サヨは着ていた服をズタズタに切り裂かれていた。それに、腕には注射の痕があり、覚せい剤の投与をされた形跡もあった…。

あの空白の30分の間に、サヨがひどい目にあったのは、火を見るより明らかだ。

俺は、その時の詳しい状況の中に、答えを見つけだす為に、ケイタに詳しい話を聞く為にここまで足を運んだのだ。

ケイタは俺の話を聞くと、だらしない姿勢を少し戻し、少し猫背の姿勢を取りながら、俺の顔を何気なく眺めている。

そして、一つ浅いため息をつくと、口を開いた。

「はぁ…答えるなんて約束するんじゃなかったな。おかげで、覚えていないなんて言い訳が出来なくなったよ」

「俺は、初めからそんな言い訳聞き入れるつもりはないけどな…いいから早く話せ」
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