365回の軌跡
縁側にウメばあさんと並んで腰を下ろす。目の前には大きな桜の木がピンク色の花を盛大に咲かせていた。この前の大雨で一時は桜の開花が心配されたが、先週は五分咲き程だったウメばあさんの桜の木は、今まさに満開だった。薄いピンクの花びらが風に舞い、音も無く、ただ静かに私の目に映っていた。
「今年も綺麗だろ?また見れて幸せだよ」
ウメばあさんは嬉しそうに目を細めて言う。
「ホントに綺麗。ウメばあさんがしっかり手入れしてるもんね」
「ばあさんはこの桜だけは守っていきたいんだ。あの人と植えた大事な桜さ」
「旦那さんとでしょ?どんな思い入れがあるの?良かったら聞かせて」
私は立ち上がり、ウメばあさんにお茶を用意してあげた。ウメばあさんは私が戻ってきたのを見計らって話し始めた。
「あの人は若い頃から頑固で働きやだったね。家族と夕食なんてほとんど食べずに仕事ばっかしてた。息子も寂しがってたよ。でもね、この桜が咲く日だけは家族みんな集まって花見をしようって決めたんだ。例えどんなに遠くにいても」
ここでウメばあさんはお茶を一口啜った。
「あの人は約束を生涯守った。外国へ出張してる時も花見のためだけに帰国してきたり、入院してる時もお医者さんに無理言って、一時帰宅したりね」
いつしかウメばあさんは桜に向かって語っていた。
「今年も綺麗だろ?また見れて幸せだよ」
ウメばあさんは嬉しそうに目を細めて言う。
「ホントに綺麗。ウメばあさんがしっかり手入れしてるもんね」
「ばあさんはこの桜だけは守っていきたいんだ。あの人と植えた大事な桜さ」
「旦那さんとでしょ?どんな思い入れがあるの?良かったら聞かせて」
私は立ち上がり、ウメばあさんにお茶を用意してあげた。ウメばあさんは私が戻ってきたのを見計らって話し始めた。
「あの人は若い頃から頑固で働きやだったね。家族と夕食なんてほとんど食べずに仕事ばっかしてた。息子も寂しがってたよ。でもね、この桜が咲く日だけは家族みんな集まって花見をしようって決めたんだ。例えどんなに遠くにいても」
ここでウメばあさんはお茶を一口啜った。
「あの人は約束を生涯守った。外国へ出張してる時も花見のためだけに帰国してきたり、入院してる時もお医者さんに無理言って、一時帰宅したりね」
いつしかウメばあさんは桜に向かって語っていた。